海風が気持ちのいい九十九里海岸近くある、障害児者の多機能型事業所 マナの家。
普通のお宅を改装したアットホームな作りは、施設ではなく、よそのお宅にお邪魔したような温かみがあります。この日は、数人の利用者と職員が、たなばた飾りや紙すきの材料を作ったり、おしゃべりをしたり、それぞれ思い思いに過ごしていました。室内には、ゆったりとした空気が流れています。

マナの家は、光の子保育園と同じ社会福祉法人恵泉福祉会が運営母体の施設で、障害を持つ方に、日中活動の場を提供している通所施設です。主な事業として、”生活介護”、”児童デイサービス”、”日中一時支援”があり、自宅、学校から施設までの送迎を含めて、8時から18時まで対応しています。「千葉県の外房方面には、このような障害を持つ方たちを対象に日中活動を提供するサービス事業所が、今も少ないのが現状です」と施設長の田中哲さんは言います。

主な事業のうち、”生活介護”は、18歳以上が対象で、日中に通所して散歩、昼食、レクリエーション、創作活動など、利用者の状態に合わせた生活作りをサポートしています(障害者自立支援法による障害程度区分の6段階評価では、3以上の方が対象です)。
”児童デイサービス”は、特別支援学校などに通う18歳未満の児童を対象で、放課後や学校が休みの期間に預かり、レクリエーション、余暇活動などを通して、療育・養護サービスを提供しています。
”日中一時支援(地域生活支援事業)”は、特別支援学校高等部3年生で18歳を迎えた方の放課後預かりや、生活介護を利用できない方の日中預かりなどを行っています。

1日の平均利用者は、”生活介護”が約8名、”児童デイサービス”が約10人ですが、夏休み期間はさらに7,8人増えます。職員は、生活支援員、指導員、看護師など、約9人で対応しており、利用者のペースに合わせた福祉作業、日中の介護、生活作りの支援を通して、生活全般にわたる質の向上を目指しています。
1日の日課は、写真の通りです。午前の海岸の散歩は、徒歩7,8分という浜辺を、毎日歩いています。ある利用者は貝殻を拾うのが日課になり、その集まった貝殻を利用して作ったのが、貝殻の写真立てです。九十九里海岸ならではの「海の香りがする作品だ」と買われる方からも好評です。また、定期外出として2か月に1度は県内各地や都内に出かけたり、居酒屋やパチンコに行くなど、楽しみの機会も作っています。

開設して3年が経ちますが、「ここまでの道のりは決して順調ではなかった」と田中さんは言います。障害者の福祉は、行政の基盤が措置制度から支援費制度へと大きく変わり、障害者自立支援法もできました。地方の財政状況が厳しい中、九十九里町という地域で、新しく障害児者の通所施設を開設するのは容易ではありませんでした。
当初は、利用者がなかなか増えず、さらにアクシデントも重なり、“もう続けていけない”と考えたこともあったとか。「そんな時にお母さんたちから、“先生、ここがなくなったら、子どもたちは行き場がないのです。皆で署名活動をしてでも、守ります”と言っていただいて。本当にありがたかったですね」(田中さん)。

午後3時を過ぎると、職員が迎えに行き、児童が次々にやってきます。学校の宿題を広げたり、おやつを食べたり、ふざけ合ったり、急ににぎやかになります。田中さんも、車で30分ほどの遠い学校まで、1人の児童を迎えに出かけます。送迎に時間がかかり、施設にいる時間は短いのですが、「それでも児童を預かることで、お母さんは働くことができます。働けるかどうかは、今の時代、死活問題ですからね」。1人1人の利用者、保護者を大切にする田中さんの姿勢が、ご家族との信頼関係にも繋がっています。
施設を後にするとき、玄関で、利用者と職員の方が見送ってくれました。一生懸命に手を横に振る利用者の笑顔と、その横でにこやかに微笑む職員の姿に、マナの家の家庭のような居心地良さを感じ、優しい気持ちにさせられました。


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